エンマ大王

-偉大なる霊界の統治者-

 裏でかなり悪どいことをやっていた、ということでかなり評判が悪い方だが、私はそんなに嫌いじゃない。
 魔界の扉編で初めてまっとうに姿を現したこの方(それまでずっとシルエットだったからねぇ)は、結構、理知的で、なんかたくさん苦労してきたんだろうなあ、って感じの人で、それまで散々コエンマさまからこの方の悪口きいてたんで(笑)、「あれっ?」と思ったんだよね。
 それで、しばらくしてから、例のコエンマさまのクーデターの話がでてきて、なんかそのすっごい悪徳政治家的イメージが、あのエンマ大王の姿にあわなくって、しばらくギャップに悩んだ。
 それでね、考えたんだけど、エンマ大王って方は、実はものすっごい親バカだったんじゃないのかしらね。
 エンマ大王ってのは、かなり強大な霊力の持ち主のようなんだけど、それに比して、コエンマさまってのはあまり大きな霊力を持っていないように思える(コエンマさまには悪いですが……)。
 コエンマさまがこれから年を経ていくごとに、霊力を増していくのかもしれないけど、それにしたって、エンマ大王の跡取りにしては、ずいぶんと貧弱なんでないかい、という印象が私にはあって、特防隊の隊長ごときにあんな懇勲無礼な扱いされちゃう(大竹隊長ときたら、丁重に見せかけて、ずいぶんとコエンマさまを軽く扱っていたぞ!)のも、そこらへんが原因なんじゃないかと思っちゃったりするわけで、コエンマさまはエンマ大王の息子としては霊カレベル的にみてかなり周囲の期待を裏切ってしまってるんではないか、と私は考える。
 その仮説を前提にして考えていくと、いろいろとつじつまがあってくる。
 霊気量というものは生まれつきのもので、どんなに努力しても増えはしないそうなので、コエンマさまがどんなにがんばろうとも、その面で周囲の期待にコエンマさまは応えることができない(エンマ大王と同等のレベルにはなれない)。コエンマさまがまだ幼い段階で、その次期エンマ大王としての欠点に、霊界の連中が気づいていて当然。コエンマさまの立場はエンマ大王の息子にしては……というよりは、エンマ大王の息子だからこそ、かなり悪い。
 将来、コエンマさまがエンマ大王の地位を継いだ時に、霊界と魔界のパワーバランスが崩れてしまう可能性も考えられたんじゃないかと思う。
 そして、エンマ大王は将来、息子が多少、力不足でも、ちゃんと霊界の地位を維持できるように、先手をうったんじゃないんだろうか?
 雷禅さまが食脱医師と出会ったのが700年前で、その時点で魔界の壁は存在していなかった。コエンマさまは約700才だそうなので、コエンマさまが生まれた後で、魔界の壁はつくられたと考えていいと思う。
 霊界の権力が長期間に渡って維持できるように、基礎をかためる。霊界のために、そして息子のために。多少、倫理的に問題がある手段を使ってでも。
 コエンマさまはエンマ大王に較べればかなり非力で、おそらくはエンマ大王に従う者の方が霊界には多いだろう。自分を罷免しようとするコエンマさまの動きを、その気になればエンマ大王は完全に封じきることができたんじゃないかと私は思う。
 しかし、それをあっさりと受け入れ、隠居を決め込んだエンマ大王は、自分に反逆してみせた息子のその行動を喜んでいたのかもしれない。
 魔界のパワーバランスが崩れ、新たなる時代が始まり、霊界もまた変わらなければならないと、力だけがものをいう時代は終わったのだと、エンマ大王は悟り、雷禅さまと同じように、自分はもう時代遅れで、これからの霊界には不要(どころか邪魔)な存在と考え、息子に将来を託し、おとなしく身をひいたのかもしれない。
 不正がバレてなお、強い支持を得ているエンマ大王……この人はこの人なりに偉大なる霊界の統治者であったんじゃないかと、私は考えている。

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