氷 菜

-氷河の真の忌み子-

 幽遊本編には、名前のみでワンカットも登場していない彼女だが、多分、雪菜ちゃんを泪さんぐらいまで成長させた姿を想像すれば間違いないんだろうと思う。
 氷菜さんについては、台詞さえひとつもなくって、ただ飛影ちゃんと雪菜ちゃんを産んだ人で、泪さんの親友、というデータしか出ていないので、とにかく謎だらけ。
 飛影ちゃんの父親とはどうやって知り合ったんだとか、どういう経緯もしくは意図があって、飛影ちゃんを産んだんだとか……もう、手がかりすら与えられていなくって、冨樫先生に訊くしかない状態(……ぜひ、教えていただきたいんだけど‥…・)。
 それでもそれでも、無理やり仮説を立てちゃうぞ、私は(なんか、すっごくおこがましくって恐縮だけど……)。
 この人が忌み子である飛影ちゃんと、氷女である雪菜ちゃんを同時に産んだのは、しっかりとした意図があってのことだと思う(100年に1回しか、女の子を産めないのに、それにピッタリあわせて男の子を産むってのは、偶然よりも必然の可能性の方が絶対に高いだろう)。
 氷菜さんには、忌み子を産まなければならない理由があった……とすれば、それはどんな理由なんだろう?
 私はね。氷菜さんは氷河の国を変えたかったんじゃないかと思う。いい方向でも悪い方向でもいいから、とにかく凍りついたように動かない、氷女たちの時間を動かしたかったんじゃないかと思う。


 雪菜ちゃんが言った「心まで凍てつかせなければ長らえない国なら、いっそ滅んでしまえばいい」という思いを、その母親であり分身である氷菜さんが抱いていたとしても、何の不思議もない。
 氷女というのは、考えれば考えるほど悲しい種族で、彼女たちは新しい生命を生み出すことができない。
 子供を産むことはできるけれど、それはあくまでも自分自身のコピーで、それは厳密に言えば「新しい生命」ではありえない。そして、本当の意味で「新しい生命」を欲するのなら、それは自分自身の命と引き替えでなければいけないわけだ。
 氷女という種族は、母親と息子が同時に存在できない。
 そのパラドックスを破る方法はただひとつ……氷菜さんが採った方法だけ。要するに、息子と同時に娘を産むことで、自分自身を新たにつくりなおすのだ(しかし、そういうことをやったのは氷菜さんだけだった)。
 息子が生き延びることができるかどうかは、賭けだけれど、そこのところは泪さんに期待してみたんじゃないかね。泪さんなら、なんとか息子を守ってくれるんじゃないかと……。そして、息子が生き延びることさえできれば、自分の分身である娘が成長した時に、力を貸してやれるのではないかと……そう考えたんじゃないかと思う。
 この仮説が正しいとすれば、氷菜さんてのは雪菜ちゃんの母親らしく、ものすごく気性の激しい人で、この人こそが氷河に混乱をもたらす「真の忌み子」であると言えると思う。


 ところで、もうひとつ仮説なんだけれど、私、泪さんて氷菜さんの友人じゃなくって恋人なんじゃないかと思う(女だらけの氷河にあって、同性愛がタブーってことはないだろう)。
 氷女の長老が泪さんに「そなたが氷菜と懇意であったことは知っている」と言ったのは、泪さんと氷菜さんが特別な関係にあったことを知っているぞ、という意味で、わざわざ泪さんに飛影ちゃんを捨てさせたのは、連帯責任をとれ、みたいなことだったんじゃないんかしらね。
 いずれにせよ、氷菜さんてのはすごい怖くて激しくて……雪菜ちゃんが思い詰めていたことを、実行してしまった人なんじゃないかと思うんだよね。
 ……本当のところはやっぱりわかんないけど。

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