-飛ばない鳥-

 鴉さんてのは、「飛べない鳥」というよりは「飛ばない鳥」というイメージがある(そいでもって、飛影ちゃんは「巣から落ちちゃって戻ろうとしてバタバタあがいてる雛鳥」で、朱雀さまは「自分は自由に飛んでるつもりだけど実は篭の中の鳥」、というイメージだな(苦笑))。
 飛ぶ力を持っているのに飛ばない。「なぜ、飛ばないのか」と問われたら、こう答えるんじゃないかと思う。・……「なぜ、飛ばなければならないのか」。
 鳥として生まれたら飛ぶのが当然、というのは、よく考えてみれば、あんまり根拠のない思い込みだと、私は思うわけで、別に飛ばなくても生きていけるのならば、飛ばなくてもいい(それでも飛んだ方がいいと思っちゃうのは、自分が飛べないからだろうな)。
 鴉さんはきっと、「飛ぶ」ことに意味を見いだせなかった「鳥」なんだろう。


 鴉さんてのはさ……とにかくひたすらアヤシイ方だよね。
 初登場の時から、誌面から浮いて見えるくらい、異質な感じがしたのよ。なんか、「出てるマンガ間違ってませんか」ってぐらい(苦笑)。
 少年マンガのキャラクターじゃないよね……せめて青年マンガにして欲しい(しかし、青年マンガのキャラクターでもないな……冨樫先生のキャラクターでしかあり得ないってとこかな)。
 それで、これは一体、何者、って思ってたら、いきなし蔵馬の背後にまわって首に指をかけてるしね……なんかもう、見てるこっちがうろたえるくらいアヤシかったよ、あれは。「ああ、大変なものを見てしまった!」ってわめきながら、のたうちまわっちゃったよ、私なんか。
 そうね。あれが青少年保護条例にひっかかったら、あのわけのわからない規制を認めてやってもいいと思う(あのいやらしさを理解できる人がつくっているんなら、納得もできるというもんだ)。そこらへんのHマンガなんかメじゃないよ。本当のいやらしさってのは、あの時の鴉さんの目つきとか指先からにじみでる、あの感じなんだよ(うっとりとして仙水を語る樹さんとかもむっちゃいやらしいよね……)。幽遊でどんなに激しいヤオイが描かれようとも、原作を超えるいやらしさをもったものは現れっこないと思うね。そこらへん、本当に冨樫先生はスゴイんだ(一応、ほめてるつもり)。


 「自分は一体、なんのために生まれてきたのか」と考える時、気持ちが沈む、と鴉さんは言う。
 実際、「なんのために生まれてきたのか」を考えている時に、気持ちが高揚する人は、多分、あんまりいないだろう。そもそも、そういうこと考えるのって、たいがいが落ち込んでる時で、明るい気分の時は、あんまりそんなこと考えないと思う。だけど、明るい鴉さんてのも、そうとうコワイものがあるな……(蔵馬を前にして、すっごくうれしそうな鴉さんは見たけど(笑))。
 「なんのために生まれてきたのか」という、あまりにも重い命題に、多分、答えはない。
 逆に言えば、答えがないから、いつまでもそれで楽しむ(?)ことができるわけで……もしかしたら、徹底的に生きることに飽きている鴉さんが、それでも生きるための方便(もしくは暇つぶし)として、「なんのために生まれてきたのか」の答えを探し続けているのかな、って思ったりする(っていうのは、ちょっと深読みのしすぎでしょうか?)。
 それにしても、「好きなものを殺すとき」気持ちが沈む、というのは、好きなものが死んでしまったせいなのか、それとも、好きなものを殺さずにはいられない自分が悲しいのか、殺してしまったらもう楽しめないからさびしいのか、もっとずっと深淵な理由があるのか……(多分、わけもわからず気持ちが沈むんだろうけど)。
 だいたい、鴉さんの「好きなもの」ってそう多くはない気がする。かなり趣味が偏った人だし、ハードル高そうだから。その鴉さんに目をつけられた蔵馬ってのは、やっぱりすごいんだな、とか思うけど、あの人に目をつけられるのって、迷惑でしかないよな……。「トリートメントはしているか?」なんて、大きなお世話だよ、実際(もっともっと蔵馬に綺麗になって欲しかったんだろうけど)。


 人格的にかなり問題があって、こういう人が目の前にいたら絶対に逃げると思うけど、鴉さんにはやっぱりどこか強烈にひかれるものがある。
 あのルックスと、かもしだす雰囲気なのかな……わかんないな……。

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