桑原和真

-ハッピーマン-

 『幽遊白書』というマンガにあって、『少年ジャンプ』の「努力・友情・勝利」のスローガンに、最初から最後まで忠実だった唯一の人(笑)。「幽遊の良心的な部分を一人で支えていた人」と言ってもいいかもしれない(大笑)。
 幽助とか飛影ちゃんとかは、「こいつら本当に大丈夫かい」と冷や汗もので見ていたけど、桑原くんだけはもう、何があっても絶対に道を踏み外さないだろう、という安心感があって、そこらへんがとってもありがたい人だった(飛影ちゃんみたいなのばっかりだったら、読んでる方の身がもたないよね、実際)。
 桑原くんは、大地にしっかりと足を踏ん張って、ゆらぐことなく自分が信じる正義を貰いて生きていて、どんな悲惨な状況におちいっても、ちゃんと自分の力で幸せになれる人だよね。
 だから、桑原くんは魔界に行かずにすんだんだと思う。
 幽助、蔵馬、飛影ちゃんは、それぞれに土台がぐらついている部分があって、それを埋め立て直すために、魔界に行って、自分のポジションを確かめる(もしくは獲得する)という作業をしなければいけなかったんだけど、桑原くんにはそれが必要なかったんだと思う。
 そういえば、主役4人組の中で、連載の最初から最後の間で、一番、変わってないのは桑原くんだよね。
 霊剣が使えるようになったり、次元刀を出せるようになったりと、戦闘能力の面ではかなり変化してるけど(しかし、どんなに強くなっても、幽助はさらに強くなってしまうので、結局、勝てないあたりがちょっと不憫)、内面的にはまったくといっていいほど変化ないでしょ。
 多分、桑原くんてのは、最初からかなり完成されてたキャラクターだったんだね(みかけから言ったら、蔵馬の方が完成されてるように見えるんだけど)。
 桑原くんだけただの人間(と言っても、かなり人間離れしちゃってるけど)で、幽助たちに置いてかれちゃって悲しいんだけど、桑原くんは「人間としての強さとたくましさ」を体現している人で、そこらへんに蔵馬とか雪菜ちゃんは強いあこがれを抱いているんじゃないかと私は思ってるから、桑原くんだけはあくまでも「人間」であり続けて欲しい。人間として、まっすぐに生きていくことを、私は桑原くんに望んでいる(まっすぐに生きるってのは、かなり難しい。障害物があってもそれを避けないで、乗り越えなければいけないということだから)。


 桑原くんは、無意識にSOSを発している人を、不思議とよくかぎつけるようで、御手洗くんはもちろん、幽助のそれにもちゃんと気づいてあげることができた。
 幽助と桑原くんが中学に入学した当時、幽助に近寄ってくる生徒なんか、きっと螢子ちゃんぐらいだった時に、どんなにコテンパンにやっつけられても、かじりつくようにして幽助にこだわり続けていた桑原くんは、多分、当時の幽助に、なんかとっても切迫したものを感じ取ったんだと思う。
 周囲の人間たちの存在をことごとく無視しようとする幽助に対して、無視しきれなくなるぐらいしつこくつきまとって、ついに自分の名前を呼ばせることに成功する。
 名前を呼ぶってのは、要するにその存在を認めてるってことで、「おれはここにいておまえを見てるんだぞ! 無視なんかさせてやんねーぞ!」という、桑原くんの主張というか気迫が、幽助に通じたわけだから、桑原くんはたかだか名前を呼ばれたってだけのことに、あんなに喜んでいたんだと思う。
 桑原くんは、ケンカでは一度も幽助に勝てなかったけど、そうやって名前を呼ばせた段階で、すでに幽助に勝っちゃってたんだよね。
 桑原くんてのは、多分、幽助の唯一人の親友。
 蔵馬と飛影ちゃんてのは、親友ってのとはちょっと違う感じがするんだよね。どういう定義をもって親友というのかは、言葉でうまく説明できないんだけど、桑原くんだけが、なぜだか幽助の「親友」って感じがするの。
 微妙な距離感の問題なのかな……よくわかんないけど。心配かけあって、どなりあって、まじめにくだらないケンカして、遠慮と迷惑と打算が入り込めないつきあいして……そういう関係を幽助と結んでる入って、桑原くんだけだから。
 実際に、幽助と桑原くんが、肩組んで「おれたち親友だよな」とか言い合ってたら、かなりブキミだろうけどね(笑)。
 ところで、桑原くん、いつも幽助のこと「浦飯」って呼んでるのに、時々いきなり「幽助」になるのはなぜだろう(案外、本当はいつも「幽助」って呼びたいんだったりして)。


 桑原くんは、幽助、蔵馬、飛影ちゃんの3人に力では勝てない(どこからどう考えても、あきらかに勝てない)。だけど、桑原くんは桑原くんなりに、あのメンバーの中で本当に大切な役割をになっているんだと思う。
 たとえ勝てなくても、桑原くんは負けない。少なくとも、根性だけは誰にも負けてない。その点については多分、飛影ちゃんも認めていると思う。
 ぶかっこうでも、コテンパンにのされてても、本当に譲れない勝負では絶対に負けないような男だから、何度、倒されても、何度でも立ち上がってくる男だから、それを、幽助も蔵馬も飛影ちゃんも高く評価しているんだろうな。
 実際、結婚するとしたら、絶対に桑原くんだよ、やっぱ(次点は酎かな……)。
 一生、絶対に信頼できて、むちゃくちゃ安心して暮らせると思うな……(幽助と飛影ちゃんは安心感の点で完全にアウトである)。すっごい明るい家庭になりそうだし、静流さんが義姉になってくれるという特典つきだし、いいことばっかよ(笑)。


 さて、桑原くんには、レゲエの父親(笑)と、かっこいい姉がいることが判明しているけど、母親は一体、どうなっているんだろう?
 私はね。登場してないだけで、ちゃんといると思う。専業主婦の母親が。
 四次元屋敷で海藤と対峙していた時、ジュースを用意しようとするぼたんに対して、桑原くんてば「氷も入れてくれ。コップは透明なのがあったらいいな。ストローもあったらつけてな」と言って、ぼたんに「注文が多いやねー」とあきれられていた。
 私の経験から言って、こういう注文の多い男には、絶対にそういう注文に「はいはい」と従ってくれる人(たいがいが専業主婦の母親)がいる。つまり、面倒な注文をいつも聞き入れてくれる人がそばにいるから、それが当然だと思って、他人にも同じことを要求するのだ(会社で女子社員に嫌われるタイプだぞ!)。
 で、静流姉さんは「そんなこと自分でやれ!」と言うタイプだから、そうやって桑原くんをあまやかしているのは、母親だろうと私はふんでいるんだけど……どんなもんだろう?


 かわいい雪菜ちゃんと、頼りになる静流姉さんと、理解ある父親に囲まれて、桑原くんは幸せに生きている。
 雪菜ちゃんとの関係については、かなり先行きが不安なところはあるけれど(雪菜ちゃんの兄の正体を知った時、桑原くんがどう対処するかがすごく知りたい)、きっと桑原くんは幸せに生きて、人間として男として、悔いることのない人生をまっとうすることができるだろうと確信できる。
 私は桑原くんのそんなところが大好きだ。

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