御手洗くんは、しきりに「自分は弱い」って言ってたけど、それって人間がごく普通に持っている弱さのような気がするんだよね。
　ただ、御手洗くんがそういう弱さを見て見ぬふりができない、きまじめで繊細な神経の持ち主だったってだけのことなんだと思うんだよ。
　学校でいじめられてたらしいけど、言っちゃ悪いが、見るからにイジメラレッ子な感じで、おまけに名前が御手洗清志で、こういう子はいじめられるよね。ホントに（名前が変ってるだけでいじめる子供の神経がわからないけど、そういうのはよくあるよな……）。
　仙水がね、領域能力者たちを取り込むにあたって、「黒の章」を見せたのは御手洗くんだけのような気がする。刃霧くんとか神谷とかに見せても、あんまり効果ないでしょ（苦笑）。月人くんにはそこまでする必要もなかったようだし。
　御手洗くんみたいに元々、かなり善良な人間に悪事を手伝わせるには、ああいう刺激の強すぎるものを見せて洗脳するのが一番なんだろうな。
　けれどまあ、御手洗くんてば人がいいな、と思うのは、自分をいいように操ろうとした仙水のことを怒らず、操られた自分の弱さを猛反省しているあたりで、本当に育ちがいい子なんだと思う。
　結局、御手洗くんが欲しかったものは、「人間も人生も、そんなに悪いもんばかりじゃない」って言ってくれる人だったんじゃないかな。
　やさしすぎて傷ついてしまった御手洗くんが、「黒の章」で受けた傷は、一生、消えるものではないだろう。
　けれど、御手洗くんは傷をそのままにはしておかない。自分の傷を自分で癒し、さらに、傷ついている他人も、同じように癒してあげたいと願い、そして行動する。
　誰かに助けて欲しくって、だけど助けて欲しいと言えなくて……それでも、そんな声にならないＳＯＳをちゃんと聞きつけて、助けてくれる桑原くんみたいな人もいるんだってことを、決して御手洗くんは忘れないだろうから……だから、きっとがんばり抜くことができると思う。そして、誰かのＳＯＳを聞きつけて、駆け寄ってあげられる人になれると思う。
　「でも変わる」と宣言した御手洗くん。そんな彼を、誰が弱いと言えるだろう。
　自分の弱さを自覚して、強くなるための努力をする入ってのは、すごくエライと思う。
　だから、もっとたくましく図太くなって、がんばってね。