時 雨

-運命に立ち会う者-

 時雨さん……見か目が痛い(苦笑)。
 どうして、あんなにピアスをつけるのかな……。武器も大きいしねぇ。案外、ただの派手好きだったりして(笑)。
 この人、考えれば考えるほど変な人だよね。手術の報酬が「人生の一部をいただくこと」なんて、そんなんで食っていけないだろう、とかつっこみたくなるんだけど、実際、その約束を破ったらどういうことになるんだろうな。不払いしてないか、監視してたりしてね。本当にそうだったら、百足の中でのんびりなんかしてらんないだろうな。忙しいだろうな(どういうわけだか私は、時雨さんのことを考えていると、そういうお笑いなことにはしってしまう……なんでだ?)。
 多分ね、時雨さんが手術をやるってのは、生きるための手段ではなく、趣味とか道楽とかいったたぐいのもんなんじゃないかしらね。
 手術をやる前に、わざわざ依頼者の昔話を聞くというあたりからして、すでに道楽。職業でやってるんなら、財産があるかどうかだけで決めるのが普通だもんね。
 この人は、どれだけの妖怪の過去をきいて、そのうち、どれだけの手術の依頼を受けてきたんだろう。時雨さんが心ひかれる人生ってのは、どういうたぐいのものなんだろう。
 妖力が最下級レベルまで下がるってことは、魔界で生き延びるのも大変ってことで、それだけのリスクを覚悟して手術を受けようとする妖怪ってのも、そうたくさんはいないだろうし、その理由もかなり重いものになるのが普通なんじゃないかしら。
 飛影ちゃんの人生は、魔界でも特に希有だとは思う。「氷河の忌み子」という出自そのものが希有だから。けれど、忌み子だから、という理由だけで、時雨さんが飛影ちゃんの過去に心ひかれたわけじゃないような気がする。
 時雨さんは「人生にひかれるか」で手術の依頼を受けるかどうかを判断する、と言ったけれど、飛影ちゃんの場合は、飛影ちゃんの過去ではなく、その存在そのものにひかれたんじゃないかと思う。
 額に包帯を巻いた、手術直後と思われる飛影ちゃんのカットを見ていると、時雨さんみたいな趣味の人(って、決してアヤシイ趣味のことじゃないです。他人の人生に興味がある人、ぐらいの意味です)が、ああいうあどけなさと強烈な意志が同居しているような顔を見たら、心ひかれずにはいられないだろうな、って思う(まあ、それは見ているのが私だからなのかもしれないけど)。
 手術の後にわざわざ剣術を教えたのって、ただの医者と患者の関係を越えているし、時雨さんてあんまり医者以上(というか医者以外というか)の関わりを、患者と持ちたがらないタイプのように見えるんだけどね。
 それって、妖力を失った飛影ちゃんに、生き延びる手段を与えたかっただけなんじゃないかな。時雨さんはさ、多分、母の氷泪石と妹を求めてさまよう子供を、簡単に死なせたくなかったんだろうね。
 そういえば、時雨さんは、世の中にたった二人の、飛影ちゃんの過去のすべてを知る人なんだな(もう一人は躯)。それで、おそらくは、唯一、飛影ちゃんと二人っきりで暮らしたことのある人だろうな(手術後、しばらく同居してたんじゃないかと思うので)。
 もしかしたら、飛影ちゃんを一番、よく知っている人なのかな……うーん……うらやましいというか、なんというか……。
 それに、考えてみれば、飛影ちゃんは時雨さんに邪眼の移植手術をしてもらうことで生まれ変わり、時雨さんに斬られることで死にかけたんだから、時雨さんは飛影ちゃんの人生における2度の“再生”の、両方に直接に関わった唯一の人物ということになるんだよね。
 時雨さんて、飛影ちゃんの運命の人なんだね(笑)。


 しかし、こういうプライド高そうで、つるむのが嫌いそうな人が、よく躯の配下になったよね。まあ、相手が躯だったからこそ、だろうけど(おまけに、戦士の地位にあるとはいえ、ビリよビリ!)。
 時雨さんは何故に躯の配下になったかな。あの性格からして、強制されてしかたなく、ということはなさそうだから、自分の意志でそうなったんだろうな。
 時雨さんは、躯の何にひかれたんだろう。
 魔界整体師であると同時に剣士でもある人だから、あの圧倒的な強さに心ひかれたのか、それとも躯という存在そのものにひかれて、近くで見ていたいと思ったのか……。
 なんか、百足の中で、躯が煙鬼さんに負けたことについて、クレームつけてたから、強い躯に心ひかれているのは確かだと思うけどね。
 時雨さんがどういう人なのかは、データがあまりにも少ないのでよくわからない。
 けれど、この人は飛影ちゃんを愛して保護してくれた人だと私は思っているので、それだけでもまあ、いい人だとか思ってしまう……我ながら、偏った判断基準だけどね。
 ところで、時雨さんと蔵馬の闘いって、絶対、見てみたかった! さぞや、見物だっただろうと思う!(アニメの方ではやったんだけど、負けた後、時雨さんが自決してしまうので、すごくイヤなんだよね)

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