桑原静流

-ハンサムウーマン-

 静流さんは、一言で言えば「かっこいい女」。
 何を着ても、何をやってもかっこいい。服装も台詞も仕草も、もう何から何までかっこいい(ジャージ姿でもかっこいいぞ!)。
 霊力、腕力、知力、精神力のすべてに優れた人だから、本人にその気さえあれば、幻海師範とか黒呼さんクラスまで強くなれたはずだ、と私は確信しているんだけど、どうしてそうしなかったのかは謎である(単純に、強くなりたいとは思っていなかったのか、それとも、めんどくさかったのか……)。
 本人にやる気さえあれば、かなりどでかいことができそうなんだけど、きっと、美容院で女の子たちの髪を切ったり、タバコをくわえて街中ぶらぶらしてたり、家で雪菜ちゃんの世話をやいたりして、日々をごくごく平凡に過ごしているのが好きなんだろうな。この人。


 この人にかかると、幽助も螢子ちゃんもぼたんも雪菜ちゃんも、同じレベルで弟(妹)扱いになっちゃうようで、静流さんはまだ大人になりきれていない彼や彼女を、いつもやさしいまなざしで見守っている。
 特に、女の子にはすっごくやさしいよね、静流さん。男の子に対してはスパルタなとこあるけど(特に弟に対して!)。
 普段は絶対によけいな手出しをしないけれど、いざとなったら黙って助けてくれて、何でもないような顔をして小さく笑ってくれそうな……ああ、なんだか、蔵馬の女版て感じだな(だけど、蔵馬より強そう(笑))。
 怒らせたら、まったく容赦がなさそうなとこも、蔵馬っぽいし……うーん……なんかいきなり気づいたけど、蔵馬と静流さんて共通点が多いな……。
 頭がよすぎて、他の人たちがまったく気づかないところで一人で苦労して、それでも自分は何もしてないよ、って顔をしそうなとこも、何でもできる人なのに望んでるのはごくごく平凡で平和な生活、ってとこも似てる……ああ、大発見!
 ……なんか、脱線しちゃったけど、とにかく静流さんてのは良い「姉」だよね。
 本当の弟である桑原くんなんか、きっとものすごい影響うけてるよね。静流さんのことを、「オレより強い」とか、あっさりきっぱり断言しちゃって、ものすごいシスコンだな、とか思うけど、あれだけすばらしい姉を持ってて、シスコンにならない方が不思議だと思う。


 静流さんの台詞で私が一番、好きなのは、暗黒武術会の決勝戦で言った、「18年とちょっとか…もーちょっち生きたかった」ってやつ。
 今にも殺されそうな時に、そんなこと言うかい? 普通。
 ちょっと、落ち着きすぎなんじゃないかと思うんだけど、なんかいかにも静流さんらしい淡々とした感じが、すっごくはまってて良いなあ、と思ったんだよね。
 だけどさ、静流さんぐらい霊力が強くって、いつも霊の存在を間近に感じて生きている人って、普通の人に比べて、死はより身近で、生と死の境界はあいまいなのかもしれない。
 誰にも目を向けてもらえない魂たちを、みつめながら生きてきた人が、他の人とはかなり違う感覚をもって世界をみつめていても、ちっともおかしくない(……というか、違ってなければおかしい)。
 遠目に見ただけで蔵馬を普通の人間じゃないと見抜いたあの目には、世界はどういうふうに映っているんだろう。幼い頃にはいろいろと大変なめにもあったんだろうな、きっと(あの父親がフォローしてくれてたのかもしれない)。
 人として存在することができない人達をみつめ、妖怪である雪菜ちゃんと生活している静流さんにとって、生きているとか死んでいるとか、人間であるとか妖怪であるとかいうことは、たいした問題じゃなくって、静流さんが見ているのは、肉体という器の中にある魂そのものなんじゃないかと思う。
 なんか……考えてみると、コワイよね。本人は、そういうふうに生まれついたんだからそういうもんなんだろう、とか割り切ってるのかもしれないけど、普通の人には見えないものが見えるってのは、すごい大変なことのような気がする。
 あの若さでなんであんなに悟ってんの、とか思うけど、生きてきた時間は短くっても、その密度がものすごく濃くって……それで、あんなに大人っぽいのかもしれない。


 結局、最後までストーリー本体にからむことなく、脇役に徹し続けた静流さんだったけれど(この人のストーリー上の最大の功績は、桑原くんを幻海師範のところに修行に出したことかな?)、彼女の存在はやっぱり偉大で、私はこの姉さんがとっても好きなんである。

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