魔界の風は、冷たいのか熱いのかよくわからないところが、ちょっとおまえに似ている。
人間界のものとは違う風、違う空、違う大地――それなのに、ひどく懐かしい感じがするのは、おれの中に流れる魔族の血のせいなのか、この風がおまえに似ているせいなのか。
ここは、おまえを生み出し、おまえを育て、おまえが帰りたがっていた場所――おまえの故郷。
懐かしい故郷に帰ることができて、おまえは幸せか?
おまえはおれと一緒にいても、故郷が恋しかったか?
故郷に帰って、おまえは一度でもおれのことを思い出してくれたか?
そんなことを聞いても答えてはくれないだろうが、そう尋ねた時のおまえの顔を見ることができれば、それで十分だ。
おれは、魔界の風を感じるたびに、おまえのことを思い出す。
魔界の風はおまえに似ている。もしかしたら、絶対につかまえられないところまで、おまえに似ているのかもしれない。
それでも――遠く離れてはいても、おれたちは今、同じ世界にいる。
だから、たまには声に出しておまえの名前を呼んでみよう。
「飛影」
気が向いたら、邪眼でおれを探してみないか?
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